コロナ禍で広がる、新しい旅の形(えんがわ劇場 第198号)

いくら「Go Toトラベル」キャンペーンがあっても、コロナ禍で旅行がしづらい日々が続く。そんな中、オンラインツアーがさまざまな形で実施されている。中には、介護施設の利用者を対象にしたツアーもある。オンラインなら気軽に旅気分が楽しめる。参加した人同士のコミュニケーションを活発にするといった効果も期待できそう。超高齢社会の新しい「旅の形」になるかもしれない。

猛暑日の8月20日、長野市の善光寺へのオンラインツアーが開催された。ツアーに申し込むと、施設や自宅で居ながらにして、現地の案内人らが名所を訪ね歩く様子をリアルタイムで見聞きできる。この日は医療・介護施設は無料、施設243カ所と一般175人が参加した。

主催したのは、介護施設利用者などの旅のコーディネートに3年ほど前から取り組んでいる旅行会社の東京トラベルパートナーズ。「新型コロナウイルス感染予防のため、高齢者は気軽に外出することもままなりません。施設に入居していると面会も制限され、つらい日々です。せめて旅の気分を味わってほしいと企画しました」と話す。

ツアーの第1回は6月、神奈川県鎌倉市の長谷寺で実施された。第2回は8月初め、沖縄県の予定だったが、同県の緊急事態宣言を受けて中止。長野が第3回だった。

開始時刻になると、事前に録画した新幹線の車窓風景が画面に映し出され、旅気分を盛り上げる。「下車」と同時に善行寺参道での生中継が始まった。メイン画面の横には、文字入力で視聴者らがやりとりする「チャット」が表示され、参加者がリアルタイムで反応を寄せる。それを、タブレット端末を手にしたリポーター役のタレント、アキラ100%さんが随時見て、反応しながら“一緒に”旅をする趣向だ。

善光寺宝林院の和田隆嗣住職が案内役として登場。アキラ100%さんと一緒に歩いていく。二人の会話に「昔、行きました」「石畳がきれい」などチャットで反応が返ってくる。絵馬が風に揺れてカラカラと音を奏でると、「涼しげ」「気持ちよい」。それに2人がまた反応して、コメントした施設名を紹介したりする。  本堂内陣までカメラが入って、正面からご本尊を拝む位置に。アキラ100%さんが拝むさいに「皆さんもご一緒に」と呼びかけ、拝む時間を長めにとる。きっと多くの施設で一緒に手を合わせているのだろう。そして、美則が参加したのが、12月18日の「長崎・軍艦島上陸オンラインツアー」だ。波間に揺られながら船で上陸。海上に自然物がない全て人工物の塊が広がった。利用者さんの歓声が上がる。元島民の方が案内され、当時をしのぶ1時間だった。

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