言葉は生きている「良い言葉は良い行動を引き起こす」(えんがわ劇場 第202号)

私たちが普段何気なく使っているものは身の回りにたくさんありますが、その中の一つに「言葉」があります。相手と意思疎通を交わす上で言葉は大切なツールです。

口から発する言葉は、相手を元気づけたり勇気づけたりして成長を後押しすることができます。その反面、自分の意図に反して、相手を傷つけてしまうこともあります。大事な一言が言えなかったり、言い過ぎたりして、後悔することもあるでしょう。

私も少しだけ若いころ、我が子に口うるさく言ってしまうことがありました。特に、仕事が忙しい時期や、疲れていたり、虫の居所が悪い時などは、ついつい感情的になり、言い過ぎてしまっていました。後になって後悔し反省するのですが、なかなか改善できませんでした。後悔の日々が今も続いていますが成長した子供たちからは「年寄りになった分、優しくなった」と少しホッとする言葉をもらっています。

今も、そんな悩める方々に贈る言葉があります。とある悩める若い営業マンが同僚と雑談をしているとき、子供たちに対する小言について何気なく話していると、同僚から「子供たちを叱る前に一度冷静になって、自分が普段同じ事ができているのか、よく考えてみるといいよ。まずは手本を示して、すぐに口出しをせず、待てる人になったらいいのではないかな」と言われたのです。

同僚の言葉を聞いた若い営業マンは、普段の生活を振り返ってみました。職場では聞き上手だった彼ですが、家庭では、妻の話を素直に聞かず言い訳ばかりしていたこと、用事を頼まれてもすぐに返事をしない姿が脳裏に浮かび、自分が一番できていないのではないかと思ったのです。

子供たちに対しては「ダメ」「早く」が口癖になっていたことにも気づきました。子供たちの行動を促そうと強く言ってきた言葉は、逆に「やる気」や「可能性」奪っていたのではないか、自分にこそ言われるべき言葉ではないかと反省したのです。

彼は心を入れ替えて、さっそく待つことを実行しました。リビングが散らかっていると、これまでは「早く片づけなさい」と叱っていたのですが、できなくて当たり前、一緒に片づけようと思うようにしました。そして、「どうすればみんなが気持ちよく過ごせるかな?」と質問し、考える機会を設け、「君たちならきっとできるよ」と励ましの言葉をかけるようにしたのです。

数ヶ月経った頃、妻から「最近子供たちをきつく叱ることがなくなったわね」と言われました。
以前よしも家族に笑顔が増え、家庭が明るくなったのに気づきました。今では子供たちは自ら行動するようになりました。

美則でも、老若男女問わずさまざまな言葉が飛び交っています。特に自分が思ったことや考えていることをうまく私たちに伝えることができず、時にとぎれとぎれに、時に感情的に、時に途中で忘れてしまったり、時に真逆な発言になったりされている利用者さんがたくさんおられます。そんなとき私たちはどうすべきか。静かに傾聴すべきなことはわかっているのですが、忙しかったりすると、姿勢が疎かになってしまい、ついついきつい言葉で対応してしまいます。私たちがもっと年数を重ね、利用者さんと同じ年齢に達したとき、どんな言葉を交わしてほしいのかを考えなければなりませんね。

言葉は人の成長を助けるとともに、能力を伸ばす効果があります。肯定的な言葉はその人を勇気づけ、自信を持たせたり前向きな気持ちにさせます。反対に、否定的な言葉は、不安にさせやる気を失わせてしまいます。認知機能が低下された方でも、備わり忘れかけている能力を復活させることができると信じています。良い言葉は、発するものも、受ける者も幸せにする力があります。

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